高嶋哲夫『首都感染』は文庫本で570ページの小説。390ページまで読み進んだ。
IMG_6107
途中から、現在の新型コロナウイルスの報道と似ている箇所に付箋紙を貼りながら読んだ。このまま貼っていけば、先日友人宅でいただいてきた付箋紙を全部使っても間に合わない。く現在進行している新型コロナウイルスと同じだ>と思い直して付箋紙を貼るのを諦めた。
IMG_6108
思い直して【高嶋哲夫 首都感染 小説】で検索すると、この小説のレビュー(感想)が様々出てきた。このレビューは平成22年に発行された初版本に対してではなく、平成25年発行の文庫本に対してのレビュー・感想。
このレビューはここから引用しました。

<平成25年のレビュー・感想>

 最近はさまざまな自然災害にみまわれるケースが多くなり、地震や風災害への備えはできていたり、意識があったりすると思います。
 でも、ウイルスに対する備えって、まだまだなんじゃないかなあと個人的に思います。
 いまもエボラ出血熱とかデング熱とかいわれているけど、具体的にそれが日本で広く蔓延したらどうなるのか?あまり肌感覚で感じられず、「ま、病院にいけばなんとかなるかな」ぐらいに正直僕は思ってました。
 だけど、この小説を読んで考えが一変しました。
 この小説はフィクションかもしれないけど、新型のインフルエンザ発生とその広がり方についてはとてもリアルに感じました。
 なかでも東京を隔離するというくだりは、首都圏に住む者にとって、実際に自分がそうなったらどんな感情になるのか?と深く考えさせられました。
 物語にあるように、抜き打ちで行わないと拡散を防ぐことができない。だけど、たまたまその日だけ残業で遅くなったりして、その間に封鎖が行われたら。。。自分と家族はもう会えないかもしれない。大義としてのウイルス拡散を防ぐことは理解できても、気持ちの折り合いをつけられない自分がいるような気がしてならないです。
 人間はどうしても短期的な快楽や効用を求めて動いてしまうもの。この物語に出てくる人たちのように、自分もそのときにはきっとそうなるんだろうなあと思いつつ、日々を大事に、そしてそのときがきたら、きちんと行動できるようになろう、と思うのでした。

2013/12/09 23:15


<平成26年のレビュー・感想>

 現代の預言者としてその名も高い高嶋哲夫の作品。この人の本は常にノンフィクションのような雰囲気が漂う。これはインフルエンザの話だけど、今ならばエボラに読み替えることだってできる。

2014/01/25 17:47


<平成28年のレビュー・感想>
良き意味での“サムライ”の話でした 2016/11/26 10:20

 良き意味での“サムライ”の話でした。素晴らしいの一言。ただ、少々気になる点を挙げるなら、中国が悪者過ぎる(まあ、実際にそういう国なんだから仕方ないが)ことと、日本が格好良すぎるというか、現実にこんな“サムライ”がいないだろうというのが悲しい。
 確かに、新型インフルエンザのパンデミックを扱ったものではあるが、それに対する態度が正に毅然としており、理想的な“サムライ”の姿勢のように私には見えたのである。現実に、このような致死率が異常に高く、変異速度の早い(耐ワクチン型のウイルスが速やかに出現してくる)ウイルスがパンデミック(感染)を引き起こしたなら、このような既然とした政策を実行できる人物が複数いなければ日本は全滅してしまうだろうな。いやはや、怖い作品でしたが、毅然としたヒーローの格好よさと、それを取り巻く人間物語に感動させられました。
 高嶋哲夫の作品は、『ミッドナイトイーグル』(2003)で注目し、その後『M8』(2004)、『命の遺伝子』(2007)などかなり読んでいるが、ハズレのない秀作揃いでした。


<平成30年のレビュー・感想>

 まさにインフルエンザが流行している今の時期に読むことで、恐怖感は倍増。著者の本はリアリティが素晴らしくて、本当に起きてもおかしくないような内容。しかも読みやすいので一気に読める。それにしても、著者の小説に登場する政治家の決断力の素晴らしさとリーダーシップを見るにつけ、実際の政治家にここまでを期待するのは無理があるのだろうか。とんでもないヒーローは出てこないものの、一人々々がこれだけの責任感を持って事に当たっているかと感じてしまう。自分がその立場だったらと思うと、難しい気もするが・・・登場人物の何気ない一言にも深みがあって良かった。

2018/08/30 22:29


今年になってからのレビュー・感想は
<令和2年のレビュー・感想>
まるで予言の書 2020/01/27 01:51

 震災、津波、原発などをテーマにした高嶋先生の作品はまるで予言のようです。現在(2020年1月)中国武漢から発した新型肺炎が日を追うごとに深刻化していますが、事態は本当にまるでこの小説を下敷きにしているかのように感じます。
 感染拡大を止める最も確実な手段は、人の移動を止めること。個人個人が正しい知識を持ち、わがままな行動を抑制しさえすればよい。しかし現実には非常に難しい。
 人の欲望と理性、政治とは、社会とは、様々なテーマを含んだ秀作です。


外出自粛中の方、おすすめの一冊 2020/04/19 19:05

 現在(2020年4月)、外出自粛の要請が続いておりますが、作品の中でも、新型感染症の蔓延防止のために、人と人との接触を控えるように書かれています。
 私はこの本を読んで、現在の状況を客観的に見ることができるようになり、ウイルスを正しく怖がりながら、落ち着いて過ごせそうです。
 この本は2010年に書かれていますが、作中にて「東日本大震災」が何回か言及されています。気になる方は作品を読んでみてください。


人の命を預かる医療従事者を守れない政府が、国民の命を守ることができるのか 

2020/04/19 19:33

 約10年前に書かれたものなのに、まるで"いま"を見ているようだ。過去の歴史に学び、それを教訓にすることができなければ、同じ過ちが繰り返される。強毒性のウイルスが発生したにもかかわらず、オリンピックの開催を優先し、直面している事実に向き合おうとしない政治姿勢が、感染拡大を世界中に広げた。
 人の命を預かる医療提供体制が蔑ろにされ、採算と経済性だけが優先され、人員も体制も削減された結果が、いざという時に困難に直面する。新型感染症、大震災、気候変動による自然災害など、繰り返される危機に学ばず、教訓化しない政治に警鐘を鳴らす本書に驚愕さえする。
 閣僚が、国民の命と健康よりも、経済への影響を優先する思考によって、危機への対応を後回しにする姿勢など、まるで現在の政府を見ているようだ。医師と看護師、マスクや防護服の不足が、国民の命を脅かす。
 "まさに、いま、起こっていることだ"。
 本書が、現実と違うのは、強力なリーダーシップを発揮する首相がいること。東京封鎖を強行すること。封鎖した地域の命と人権を、他地域の人々の命を守るために犠牲にすること。こうしたことを現実にさせないためには、過去の教訓に学び、人の命を守るために、日頃からの対策を怠らないことだろう。
 いまの政府は、過去に学ばない。過去の教訓を踏まえた対策をしない。人の命よりも利益・儲けを優先する。とりわけ、医療提供体制の削減をしてきた。
 いまこそ、みんなで政府に求めよう。昨日の過ちを教訓にして、いまできることを最大限にしよう。今日の過ちを明日の教訓にしよう。過ちを教訓として活かすためには、批判が欠かせない。過ちに対する批判を受け入れ、その教訓を、毎日毎日、改善していく姿勢こそが、"いま"の危機を乗り越える最大の力へとつながるのだ。

すごい小説だと思った。 2020/05/03 18:12

 読み始めて、すごい小説だと思った。まるでコロナ禍の現在をリアルタイムで描いているような感じだった。
 政権内部での各大臣の思惑とか、WHOの動き方とか、凡百の評論家よりもよくわかって描いているように思った。航空便の乗り入れを禁止することが宣戦布告に匹敵するという描写があって、この人はそういうこともよくわかってかいているんだなあ、と思った。
 この小説では、最後に画期的なワクチンと抗ウイルス剤が、超法規的に認可されて、ハッピーエンドとなるのだが、それはあくまで小説だからで、現実がそんなにうまくいくかどうか。そうであればいいのになと思う。
 その点を除けば、ものすごくリアリティに充ち満ちていて、コロナ禍の昨今、今後を考えるうえでも絶対に読んで損はない小説だと思った。(2020/05/03)